TAXI!

先日、不思議なタクシーに乗った。行先までのルート選択式タクシーである。(そんな選択式タクシー制度はありません、念のため)
行先を告げると、運転手がどのルートを使うかと聞いてくる。まぁ、大まかなルート、つまり自分が一番近道だと考えるルートを聞かれることは、今までもあった。客によって好みがあるので、いくら運転手が距離的には近いと知っていても「あっちの方が近いのに遠回りしやがって」と考える客はいるのであろう。
しかし、このタクシーはひと味違った。聞いてくるルートがかなり細かい。しかもダメだしをされる。
「お客様、この時間に〇×通りを使うことはおススメできません」とカーナビを指しながら説いてくる。なるほどねぇ、と思って「じゃあ、△通り経由はどうですか」と聞くと「そんなっ、お客様!それは遠回りすぎて私の良心が痛みます。えぇ、それだけはできません」(こんな口調なんです、本当に)
「では、運転手さんが考える最短ルートでお願いします」と頼むと「それはできません」とのこと。つーか、東京に詳しくない人が乗ったらどーすんだ、あんた。私も意固地になって「じゃあ、○○神社経由?〇×大学経由?」と聞いていくとひとつに運転手が喰いついた。「そうですね!それがおススメです!それで参りましょう」とカーナビで混雑状況を確認しながら裏道を駆使して走り始める。
ホッとひと息つくと、しばらくして、またルート選択の道となる。で、また上記のような会話のループ。3度繰り返したところで、どーでもよくなったが、あまりのしつこさに、これはもしやドッキリでは?とカメラを探してしまいました。
すでに道程の半分くらいのところでは、疲れ果て、窓の外に流れる風景を力なく見ていた私だが、ある角を曲がったところで「あぁ、なんてことを・・・・」という運転手の悲愴な独り言にビクリとする。目をむけると「あぁ、やっぱり。ここか。ここが敗因か・・・」とカーナビを操作しながらつぶやく彼(←30代って感じだった)。なんじゃなんじゃと思っていると
「お客様・・・・ほんとっーーーーーに申し訳ありません。ここで混雑をさけるために曲がるはずでしたが、間違えてしまったようです」
ここです、ここ、とカーナビを指す彼は、まるで治療ミスをレントゲンを見せながら説明する医者の様・・・。落ちこみ、謝り続ける彼を「つけばいいんですから」(←心からの言葉)と慰めるが効果なし。ようやく目的地に辿り着くと
「すべては私のせいです。遠回り分の金額はいただきません。えぇ、タクシーの運転手としていただくわけにはいきません!」とメータ金額より数百円安くしてくれたが、こんな疲れるタクシーなら、安くしてくれても乗りたくないと思った私でありました・・・。