アカダマの閉店

昨年末、奈良の老舗の喫茶店アカダマが閉店した。長く、この事実を受けとめられなかったが、今日、アカダマで購入した最後の珈琲を淹れて、自分なりの区切りがやっとついた。どーーしても、最後の1杯が飲めなくて、悪くなるのはわかっていながら、今日まで先延ばししていた次第である。

最初にお店にいったのは高校生の時。高校生ながら愛読していたサライか何か旅の雑誌に載っていたのが、最初のきっかけだった。大学で関西に来たのを機に、毎月珈琲豆を買い、お茶をするために通った。もうこの頃には注文するものも決まっていて、キームンを飲んでいた。マスターの淹れ方がまた絶妙なんである。珈琲豆を買った日は、同居していた友人たちとともに、挽きたての珈琲を楽しんでいたのもいい思い出である。

大学院で東京に戻ってからも、機会をみては通っていた。一昨年、念願かなって、やっと奈良に引っ越してきて、再度通い始めたところなのに、一年しか猶予がなかったのは非常に寂しい。

時がたつにつれ、なくなっていくものがあるのは仕方ない。十数年馴染んできたこの味を忘れることはないと思いつつ、それでも私も、じきにいなくなるのも世の中というものである。これから一年、次に桜が咲くその時まで、やるべきことをやる、と決意しつつ、ふと会津八一を思い出し、改めて奈良をもっと楽しもうと思う春。

あめつちに われひとりいてたつごとき このさびしさをきみはほほえむ(会津八一)