時代の岐路にたつ【ブラティスラヴァ③】

Roo2006-02-03

日曜礼拝が終わってからは、彼女の教会友達とまた街見物にくりだす。といっても、土曜日一日かけて主だった建築は見尽くしているので、土曜に閉まっていて入れなかった教会の、日曜礼拝のタイミングをはかって訪れる。礼拝の間は好きに出入りできるようになっているので、礼拝を見学できかつ外からはわからない内装が見学できるので二度おいしい。
教会も6つほどまわると、オススメの場所があった!と友人が思い出して足を進める場所があった。市の現代美術館での展示である。これが面白かった。写真からではわかりにくいかもしれないが、鏡を工夫して使っている展示で、来訪者はまるで数十メートルも積み重ねられた本のトンネルの間を通る気分になる。実際は通路の両脇に、2メートルちょっとの高さまで本が両脇に積み重ねられており、鏡が設置されているだけなのだが、人はその鏡の作用によって、まるで空中にかけられている橋を天までのびる本の山に囲まれて渡る気分になるんである。うまい鏡による錯覚の利用。注意書きには「高所恐怖症の人はご遠慮ください」と書いてある。トリックがわかっていても、怖いものは怖いんだろうなぁ。
そして、最後に彼女が連れていってくれたのは、ブラティスヴァ全体を見渡せる小高い丘だった。丘には、第二次世界大戦時、ドイツ支配下におかれた、この都市を開放した時の戦いで命を落とした旧ソ連の戦死者追悼の記念碑が建てられ、その景色の良さから周辺は高級住宅街として知られている。遠くには「ひっくり返ったテーブル」といわれているブラティスラヴァ城もみえ、改めて市街を見渡すと、近年建てられ始めた高層ビルが点々と抜き出てみえる。1993年にチェコスロヴァキアが解体し、スロヴァキアとして成立したこの国は、2004年にEU加盟を果たした後、あらゆる面で劇的な変化を一見変わらぬ水面下で経験している、まさにその時なのかもしれない。街には、共産主義時代に流れてきたベトナム人の市が現在もたち、第一外国語としてロシア語、チェコ語を話す大多数の人々のかたわら、自由に海外へ旅して留学する若い世代が出現し、極めてモダンな建築が建造し始められている。観光資源となるような主だった建造物は、ここ数年すごいスピードで修復がすすめられている一方、街中にはうち捨てられた18世紀〜19世紀の建造物が目立つ。
街中の写真を撮りながら、おそらく、5年ぶりのウィーンのように「変わらないなぁ」といえる部分の方が少なくなるのではないか、と考えずにはいられない。