奈良訪問【志賀直哉旧居】

薬師寺から歩いて5分。そこに作家志賀直哉が暮らした日本家屋がある。京都の数奇屋職人に依頼して、直哉自身が設計に携わったまさに彼の夢の城。
実は、今までは外から「へぇ」と眺めたことがあるだけで、中を見学したことはなかった。今回は初めて中に入ってみた。見学は、1階の外側から順番に部屋を覗いていくようになっている。最初に北側の直哉の書斎から始まって、茶室、子供達の部屋、奥方の部屋、「高畑サロン」といわれた芸術家達が日々集った溜まり場であったサロンで終わる。要所に、まるで家ベルのようなボタンが設置されており、それを押すと音声が流れて、説明をしてくれる。書斎などは、押入れにスピーカーがあり、そこから声が聞こえてくるので、まるで、ナレーターのおじ様がそこに座って朗読しているかのようなリアルさである。しかも、そのナレーターの内容が、「あなた実はどこかで見ていますね」というタイミングなんである。例えば、書斎において
「書斎の横には茶室が設けられており、茶室の炉には・・・」
と説明が流れたら、横の先輩は「え?茶室?どこに?」とキョロキョロ。すると、絶妙のタイミングで
「ここからはみえません・・・」とちゃんと見通したような言葉がはいる。一瞬、襖のむこうにニヤリと笑った好爺が見えた気がしたのは、気のせいである・・・。
直哉邸、おそるべし。