密林のなかの・・・

Roo2005-09-04

「密林の・・・」といっても、一応シェムリアップ地方にあるアンコール遺跡群周辺は、木々の伐採を定期的におこなっており、もう密林に埋もれていたりはしない。踏査も楽なもんである。最近シェムリアップにいらっしゃる先生方が口々におっしゃるのは「変わったなぁ」という言葉。まぁ、街自体も変化しているが、それ以外にもアンコール遺跡群から離れたところにある遺跡、例えばコーケー遺跡、バンテァイ・チュマール遺跡などにけっこう簡単にいけるようになったことが、まさしく変わってきたことだろう。あんまり知られていないのだが、カンボジアにはアンコール遺跡群以外にも、大規模な遺跡が後4つは存在する。つまり、バンテアイ・チュマール遺跡、コーケー遺跡、コンポン・スヴァイのプリア・カーン遺跡、サンボール・プレイ・クック遺跡の4つ(けれど、これは「大規模な」ということに限定した遺跡群であり、その他のアンコール王朝の遺跡の数は、まだ正確に把握できていないほどたくさんある)。コーケー遺跡などは、3年前くらいまではカンボジア軍から特別にヘリコプターを借りていかなければ、到達できなかった遺跡である。しかし、現在はそのコーケー遺跡まで車で2時間半。一応は日帰りできる距離になっている。まぁ、もちろん観光として軽くいくほど、治安は良くない場所なんだが。
さて、そのコーケー遺跡に行く途中には、ベン・メリア遺跡といわれる遺跡が存在する。規模はアンコール・ワットと同規模で、さらにバライといわれる貯水池跡もあるから、けっこうな大きさの遺跡である。シェムリアップからは車で1時間半。3年ほど前からこのベン・メリア遺跡も観光化がすすみ、観光客が訪れるようになって、入場料がとられ、遺跡内のルートが確保されるようになった。
カンボジアの考古学専攻の学生10名と、そのベン・メリア遺跡へ研修にむかったのは一昨日のことである。プラス日本人考古学者2名、建築1名、そして私の14名。目的はベン・メリア遺跡だったが、その東に位置するバライ周辺のPrasat ChreiやPrasat Kon Phlukといわれる小遺跡には、実際にメンバーのなかで行ったことのある人間はいなかったので、途中で出会った周辺村落の人に案内をしてもらって、この遺跡を探すことになった。
最近は、木が払われたアンコール遺跡群ばかりに慣れていたので、先頭を歩く村の人に草を払ってもらいながらすすむのは久しぶり。そして、地雷の危険性を身近に感じたのも久しぶり。所々に落雷が原因ではないであろう、破壊された木がみえる。地方にいけば、まだ地雷撤去をおこなっていないところも多いのだ。しかし、村の人々が通る道を、絶対にそれずについていけば問題ない。
結局、Prasat ChreiとPrasat Kon Phlukのふたつに到達できたが、前者の遺跡は3年ほど前に崩壊がおき、中にはいるのは危険な状態だったので、外からのみ。後者のPrasat Kon Phlukも中央祠堂があったとされる場所までいったが、森が深くて奥までは立ち入れず、少し開けた中央祠堂部分をウロウロ。研修に参加している学生は、ほとんどがプノンペン育ちの都会っ子なので、こんな藪の中にはいっていくのは大丈夫かいな、と思っていたが、彼らは意外にドンドン進んで行き、こちらがびっくりするくらい。
「僕はこういう森の中にある遺跡を訪れるのが大好きなんだ」と断言する学生も。はて、やっぱりロマンなんですかね。蛇足ですが、最近「ベン・メリア」遺跡という名称がひろがっていますが、正確には「バゥン・メリア」だったりします。