「はい、落第でーす」とな?

ベルギーの修士号はほとんどが2年間。そこは日本と同じだが、違うのは、最初の1年間に講義を受けて、次の2年目は論文調査に徹する(あれ?いっしょ?)。なので、最初の1年目の試験期間は非常に忙しいらしい。試験を毎日のように受けて受けてうけまくる。
本日は、その結果発表がお城であるというので、興味深々でお邪魔してみた。
想像では「単位認定表」なるものを手渡しで教授から受け取って終わりなんかなー、と思っていたが、実際は研究科ごとに講堂に集って行なわれる。ルーバンは全生徒数3万人を越える大規模な大学、さらには研究科の下にいくつもの専攻があるわけで、当然その人数は多くなる。何故か生徒の両親やら恋人まで詰め掛けて、講堂はいっぱいいっぱいである。そんな中、全然結果発表に関係ない私がいて、ちゃっかり前の方にベルギー人友人と座っているのは気がひけたが、それは外国人ということで許してもらおう。200人は入る講堂がいっぱいで、通路にまで人が座っている。この人数に対して「単位認定表」を渡していたら時間かかるやろうなー、とちょっと心配していると、開始時刻を30分ほど余裕で過ぎて、前の方の入り口から教授どもがズラズラと入場。前方の黒板前に横一列に二十数名の教授がずらりと並ぶ。博士号取得とは違い、さすがにガウンは着用していないが、それぞれ神妙な面持ちである。否応なしに講堂内のテンションもあがる。心なしか両隣の生徒から緊張がはしる。すると、一番えらそうな教授が真ん中に立ち、「では読み上げます」という具合に手元のリストを読み上げていく。
「コラリー・スミット 合格」「チャン・リウ 合格だけどギリギリ」「ジェフリー・ヴァン・ヴァレン 不合格」ってな具合である。これはかなり手に汗にぎる。一定のトーンで粛々と読み上げているにも関らず、その実けっこうな人数が落第しているからである!日本では修士の1年目の講義を落とすなんて、まずありえないが、ここでは十分ありえるらしい。それだけ評価が厳しいということであろう。不思議なのは、生徒側からの反応がほとんどないこと。「やったーーーーー!」という声もなく、絶望する声もなく、ただ淡々と、適度な緊張感を保ちながら名前が読み上げられるのを待っているのはとっても不思議。
しかし、どうやら彼らのエネルギーはその後、全員を対象におこなわれる城でのレセプションに蓄えられていたものだったらしい。大学側もその人数にただで(授業料として含まれていると思うが)ワイン、シャンパン、ビールなどをふるまうとは太っ腹である。相手は院生といえども学生であるから当然よく飲むし、よく食う。ワイン片手にお城のバルコニーで「夏休みの予定はどうするの?」とか和気藹々と語り合う学生には先ほどの緊張感はない。しかし、講義の単位をとっただけでこうだったら、論文を提出して本当に修士号を取得したらどうなるのか、かなり興味がある今日この頃。