ブダ、ペスト、ヒルトン、古伊万里

ブダペストへ行く機会があった。
あの街が「ブダ」と「ペスト」にわかれているって知っていましたか。「今日、ブダとペストどっちにいく?」という問いに悩んでいたのは私だけですか、そうですか。ドナウを挟んで王宮がある方をブダ、国会議事堂などがある方をペストというそうで。

1日だけ時間が与えられて、どこに行く?という話しになった時、保存修復関係者が20名も集ったら、そりゃ自然とその関係の場所になるのは当然で。「ヒルトンかな」「うん、ヒルトンだよね」ということになった。
ブダペストヒルトンが、ブダ側の王宮やらローマ遺跡が残る歴史的景観区域に建設されることが決まった時、当然ながらすさまじい反対にあった。このような歴史的に重要な地区に、近代建築を建てるなんて、その景観を乱すものだ、と。ま、それだけが理由ではなく、その反対の背景にはもちろん、アメリカ資本に対する反感などの政治的な理由も多大にあったんだけど。そして、この反対に対処すべく、ブダペストヒルトンは、建設地にあった歴史的遺構をホテル内に残すように設計され、さらには、ホテル側面に鏡のような特別なガラスを使うことで、その横に位置するマーチャーシュ教会(13世紀の建築)を映し、「景観」を創りだす画期的建築として有名となる。
近代建築を歴史的建造物とどのように調和させるかというのは、保存修復分野の大きなトピックだが、この「景観映し出し作戦」(いま、命名)、このブタペスト以降、他でもやられている。ブダペストのご近所さん。ウィーン中心シュテファン教会の前にある近代ビルがそれだ。まったくの個人的好みだけれど、あれってどうよ?と思う。ブダペストの例も、これってどうよ?と思う。ホテルのガラスに映る、新しい視点からのマーチャーシュ教会を、眺めて楽しむことができても、それが周辺環境と「調和」してるか、と考えたらやはり「してない」と思う。かといって、じゃあ、お前がやってみろよ、といわれたら困るところ。批判はいくらでもできますからねぇ。
そして、あーでもない、こーでもない、と議論する仲間たちの間をコッソリ抜けて、私がひとりで向かった先は、街はずれの骨董通り。実は、ガイドブックに「日本の古美術の価値がわからないため、古伊万里などが安く売られている」と書いてあったのだ。しかし、鼻息荒くむかった先は、日曜日ゆえに全店お休み。そんなぁー、とあきらめきれずにウィンドウにへばりついて中を見てみると、特に日本陶器が多くあるわけでもなく、チト期待外れ。いくつかの店舗には、奥の方に日本風の皿の存在が確認できたものの、古伊万里どころかかなり新しい作品にみえた。まぁ、何回か足繁く通わないと、わからないもんだろうけど。今度は日曜以外にブダペストに滞在したいなぁ、と思う結果となりました。