メアリー・ポピンズとドラえもん

街並み保存についての講義を受けもつ教授は、小柄な、こういっては失礼かもしれないが、大変可愛らしい女性である。いつも暖かそうな緑色のコートと帽子に身を包み、やはり濃緑のキャリングケースをカラカラと石畳に転がしながら、講義を行なうお城に入ってくる。何がそんなに入っているんだろう、と疑問に思っていたら「皆さん、これはお読みになられましたかしら?あら、ご存知ではない?」と次々に分厚い学術書が魔法のようにでてきた。「これは?じゃあ、こちらはいかが?」と出てくる、出てくる。隣の学生に「なんだか、ドラえもんの異次元ポケットみたいだよね」と伝えようとして、気づく。
こっちの人、ドラえもん知らないやん!
今までのインドネシアやタイなら、ドラえもんで通じてしまうんである。インドネシア語の竹コプター(=バリバリバンブー)は未だに忘れられんし。しかし、ここでは通じない。突然の心の葛藤(?)を隠し「なんだか、何でもでてくるような鞄だよね・・・」と苦心しながら言ってみる。すると、「あぁ、メアリー・ポピンズの鞄みたいな?」と返された。
メアリー・ポピンズ!そうきましたか、お嬢さん。(ポンと手を打つ)
日本人的にはあんまり馴染みがないキャラクターな気がするけど、なるほどねぇ、と納得。うんうん、そういえばそんな鞄持ってた気がするよ。しかし、それを聞いていた他の学生が「君の鞄こそメアリー・ポピンズの鞄だと思うけど・・・」とコメント。(どうやら、この間、プリントアウトの場所を探していた彼に「あ、プリンター使う?」と背中の鞄からプリンターを出したのが衝撃だったらしい・・・)「そうねぇ」と横のギリシャの子も同意。(どうやら、この間、19世紀の要塞を見学しに行った時、水筒の珈琲に砂糖を入れるのを忘れた彼女に、鞄にあった砂糖を差し出したのが印象に残ったらしい)
それから私の呼び名が、メアリーになったとかいうオチはないけど、ここがタイだったら絶対「ドラえもーん」と呼ばれてからかわれていたはずである。あぶない、あぶない。ま、ドラエもんに似てるよね、とはかなり昔にも言われていたが。それにしても、今まで「似ている」と言われたのは人間であったためしがない。ゴン太とか、プーさんとか、ドラえもんとか・・・。まぁ、祖母がイオーク(スター・ウォーズ参照)似だから仕方ないのだろう。