ホームズと倫敦

小学生の頃、夏休みの自由研究で「シャーロック・ホームズの研究」と1冊のノートを提出した。ジャポニカ学習帳1冊を丸々使って、各出版社のホームズ・シリーズを検証してホームズ辞典のような形にした力作だったが、担任およびクラスメートには見向きもされなかった悲しい過去を持つ。力作だと思っていたのは本人だけだったらしい。

ま、それは置いておいて、ベーカー街といえば聖地である。ホームズが住んでいたとされる221bには現在銀行が建っているが、あるホームズ愛好家がその少し先の土地を買い取って、私設ホームズ博物館を建設して、そこを221bとしてしまった話は有名である。この博物館にはドイルの作品に忠実に従ったホームズとワトソンの部屋が再現されている。1階にはハドソン夫人のカフェ。(食べたことはないけど)まぁ、しかしこの無理やり221bにしてしまったことで、混乱が生じてしまったことは確かである。銀行側から文句がでようというもの。

さて、実はホームズがロンドンにいたとされている時期は、夏目漱石がロンドンにいた時期と重なっている。このことから、夏目漱石の研究家がエッセイを書いているし、ミステリーでは島田荘司による「漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件」という秀作がある。これはぜひ一読をオススメする。

ホームズといえば、英国グラナダ・テレビによって製作されたホームズ・シリーズが一番馴染み深いのではないだろうか。現在まで様々な役者がホームズ役をしてきたが、私はこのジェレミー・ブレッドによるホームズが一番理想に近い。残念ながら、シリーズの後半は体調を崩して早世してしまったが、「ストランド」で連載されていたホームズ・シリーズの挿絵でみる、両手の指先を押し合わせてソファで丸くなって考える姿など、ジェレミーが演じれば、それはまさにホームズそのものである。この、ジェレミー・ブレッド、実はオードリー・ヘップバーンの「マイフェア・レディ」にでてきていた俳優である。そう。オードリーに惚れてしまうおぼっちゃん役を演じたのは彼である。ホームズ全作を撮り終える前に惜しくもこの世を去ったジェレミーだが、その名は長く語り継がれるにちがいない。